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ときのこえ
2022.11.01(火)

ときのこえ2022年10月号

信じてすがった女性の勇気

 石坂奈緒美


 最近、二十年ぶりに懐かしいママ友と会い、お喋りをすることができました。二十年の間の出来事を話すには二時間では全く足りませんでした。子育ては終盤、子離れ期となり、やっと自分の時間がもてると思いきや、自立の難しさ、更年期の体調不良、夫婦の問題、そして親の介護等々、悩み、課題は尽きません。「いつ楽になるんだろう?」そんな言葉がつい出るのでした。

 聖書を読んでいると、イエス様に救いや癒しを求める人には、様々な事情があり、いろいろな苦しみを抱えていることがわかります。重い皮膚病のため人目を避けて生活しなければならない人や、悪霊に憑かれて町では生活できず、墓場や山で暮らしていた人、長い間闘病しながら生活していた女性……。

 正面から堂々と癒しを願うことのできる人もいれば、できない人もいたでしょう。そんな事情を抱えながらも、イエス様の力に期待して「何とか治りたい」一心で行動に出た女性のことが、聖書のマルコによる福音書五章に記されています。

 この女性は、十二年もの間、出血が止まらない病気に悩まされていました(婦人科系の病気だったのでしょう)。この時代、その病は汚れたものとされ、周囲の人々からひどい扱いを受け、財産を使い果たし医者に診てもらっても一向に良くならなかったというのです。どれだけ苦しかったことか、不安と孤独の闘いだったことかと想像します。

 そんな時、イエス様のうわさを聞いて、彼女は「この方の服にでも触れれば癒していただける」とすがる思いで群衆に紛れて、後ろからそっとイエス様の服に触りました。必死だったでしょう。その瞬間、彼女は癒されました。一方、自分から力が出ていったことを感じたイエス様は、「わたしの服に触れたのは誰か?」と捜したのです。

 この女性にしてみれば、放っておいてほしかったでしょう。捜されて名乗り出たくはなかったでしょう。「怒られる」と思ったかもしれません。でもイエス様はあえて捜し出し、応答することを求められました。

「女は自分の身に起こったことを知って恐ろしくなり、震えながら進み出てひれ伏し、すべてをありのまま話した。」(33節)

 勇気のいることだったでしょう。イエス様はいつでも人格的な交わりを求め、苦しみに寄り添われます。そして、進み出たこの女性の勇気と応答を深く喜ばれ、「娘よ、あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい。もうその病気にかからず、元気に暮らしなさい」(34節)と祝福されました。

 イエス様の促しに応答したことによって彼女は病の癒しだけでなく、人との関わりも回復されました。彼女が「信じてすがった」ことをイエス様は評価されたのです。癒し主であるイエス様のお姿に深い慰めを感じます。

 イエス様が関わったこの女性は、言うならば誰からも顧みられない人、日の当たらないところの人でした。そういう人の叫びや求めにイエス様は応え、必要を満たされます。堂々と「助けて」と言えない人の呻き、求めにさえもイエス様は応えられる、憐れみ深いお方です。

 このイエス様に私たちはどんな苦しみ、悩みでも打ち明け、助けを求めることができます。その大きな憐れみと絶大な力を信じてすがってよいのです。自分で何とかしようとしないで、力を抜いて、この女性が「イエス様の服に触れれば癒していただける」と信じた信仰に倣って、イエス様に期待を大きくもちましょう。イエス様は私たちの思いを超えてすばらしいことをなしてくださいます。

(救世軍士官〔伝道者〕)

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