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ときのこえ
2026.11.01(日)

ときのこえ2026年10月号

あなたが口を閉ざしているなら

 西村和江

  
 しばらく前、私はアメリカの救世軍で配布された「She Speaks」(シー・スピークス)と書かれたキーホルダーを受け取りました。はじめはこれが何を意味するのか意識していなかったのですが、後から、「彼女は語る」、つまり、女性たちが自分の思いを自由に表現することの大切さが示されているのだと気づかされました。また、ただ語るだけでなく、世の中に発信していく、「彼女は声を上げる」と読むことができる言葉だと思うと、小さなキーホルダーから強いメッセージが発せられていると思うようになりました。

 旧約聖書の中に、エステルという王妃の物語があります。彼女は陰謀によって絶滅の危機にあった自身の同胞であるユダヤ人たちを救うために、声を上げた女性でした。

 紀元前5世紀頃のペルシャ帝国が舞台です。エステルはこの陰謀を王に告げ、ユダヤ人虐殺を未然に防ごうとしますが、当時、王に呼ばれていない者がその前に進み出るだけで死刑になると法律に定められていました。王に自分の思いを進言するということは、死を覚悟する以上の勇気がいる行為であったにもかかわらず、エステルはその一歩を踏み出したのです。

この時にあたってあなたが口を閉ざしているなら、
ユダヤ人の解放と救済は他のところから起こり、
あなた自身と父の家は滅ぼされるにちがいない。
この時のためにこそ、
あなたは王妃の位にまで達したのではないか。
エステル記4章14節

 養父であるモルデカイから、手紙を通じてこのように伝えられたエステルは、「王のもとに参ります」と決意を示しました。彼女の勇気ある、また、知恵に満ちた行動により、ユダヤ人を滅ぼそうとする陰謀から多くの人々が救われたのでした。

 私たちは、同じように行動しなさいと言われても決してできません。自分にはそのような権限も与えられていなければ、知識や経験もありません、と逃げたくなることばかりでしょう。

 エステルも王妃になる前は権力をもたない民族の女性であり、両親を亡くして強い後ろ盾もありませんでした。決して初めから勇気と強さをもっていたわけではないのです。望むか望まないかにかかわらず、王妃の立場に立たされたことを通し、この時のためにこそ自分がここにいるのだと彼女は自覚しました。そして、口を閉ざすのではなく、声を上げることを選び取っていきました。

 ただし、エステルは行動に移す前に、大勢のユダヤ人たちと共に三日間の断食をしたのです。私たちも語るときには十分に備えることが必要です。

 聖書には

主よ、わたしの口に見張りを置き 唇の戸を守ってください
詩編141編3節

という祈りがあります。語るべき時に語るべきことを正しく選び取っていくことができるように、神様に自分の唇を清めていただきましょう。語るにしても黙するにしても、自分の身勝手な思いではなく、すべてのことの背後におられ、間違いなく導いてくださる神様の御心がなされるようにと祈りましょう。

 救世軍では10月第3週目の日曜日を女性サンデーとして守ります。女性たちが神様によって励まされ、力を得て、必要な声を発することができるようにと願っています。

(救世軍士官〔伝道者〕)

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