ときのこえ 2018年2月号

パイプオルガンを街頭に 藤井 健次

ときのこえ2018年2月1日

キリスト教音楽といえば、厳かな礼拝堂に据えられたパイプオルガンを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。ヨハン・セバスチャン・バッハが作曲した、「トッカータとフーガ ニ短調」や、コラール「主よ、人の望みの喜びよ」など、パイプオルガンの演奏で有名なこれらのキリスト教の楽曲を、一度は耳にしたことがあるかと思います。

今から140年前の1878年、英国でこのパイプオルガンの音色を街頭に持ち出した人がいました。それは、救世軍の創立者ウイリアム・ブースです。

当時、街頭で熱心にキリスト教の伝道活動をした救世軍のメンバーは、様々な場所で群衆の妨害に遭い、迫害されました。そんな中、ある村にメソジストの教会員として聖歌隊とオーケストラの指揮者を務めたチャールズ・ウィリアム・フライという人がいました。彼は、三人の息子と共に金管楽器(ブラス)も奏することができたので、ある時、迫害に窮していた救世軍からの依頼を受け、近くの町でおこなわれる街頭での伝道を助けることになりました。彼らが賛美歌を金管楽器で演奏すると、不思議なことに、それまで妨害していた無頼漢たちが、彼らの奏でる音色に耳を傾け、静かになったのです。賛美歌を金管楽器で演奏する「力」を知ったウイリアム・ブースは1880年、各地にある救世軍の小隊(教会にあたる)に、通達します。

「先般のウェールズ及びコーンウォール各地の集会、さらに先のプリマス、ノッチンガム、その他どこでも、楽器によって多くの群衆を、野戦(路傍伝道)に、室内集会に、引きつけ得ることが判明した。それゆえ、士官(伝道者)と兵士(信徒)は男女を問わず、できる者は誰でも、何か自分に適した楽器を一つ習い覚えるよう、奨励する。…各種金管楽器、太鼓その他、主のために喜ばしい音を奏でるものなら、なんでも結構である。」
(翌年、金管のみの編成が改めて奨励された)

救世軍のブラスバンドはやがて、「歩く銀色のパイプオルガン」と言われるようになりました。それは、あたかも教会に備え付けられていたパイプオルガンが街頭に出たかのように、町々村々にいる群衆に、主を賛美する音色、神の愛と救いのメッセージを届ける美しい音色を響かせたからです。こうして、ウイリアム・ブースは、教会内のパイプオルガンを街頭に持ち出した人物として、キリスト教音楽史に大きな影響を与えました。

一つの逸話をご紹介しましょう。
ずいぶん昔のある日のこと。ノッチンガムのトロント橋の上を、生きる望みを失った17歳の少女が歩いていました。ちょうどその時、救世軍の一団が近くで「いつくしみ深き」という賛美歌をブラスバンドの伴奏で歌っていました。彼女は、その歌を聞くうちに、その歌に歌われている「友なるイエス」を知り、イエス・キリストを生涯の友として受け入れることができたのでした。クリスチャンとなった彼女は、希望と喜びに満ちた人生を歩むようになり、救世軍の士官として伝道者の生涯を送りました。彼女の息子も後に救世軍の士官になりました。

さていよいよ来月、アメリカから救世軍のニューヨーク・スタッフ・バンドを日本に迎えます。29年ぶり、2度目の来日です。皆さんにもぜひ、神の愛と救いのメッセージを伝えるそのすばらしい音色を聞いていただきたいと思います。

最後に、聖書の言葉を贈ります。

「主は恵みに富み、憐れみ深く 忍耐強く、慈しみに満ちておられます。主はすべてのものに恵みを与え 造られたすべてのものを憐れんでくださいます。主よ、造られたものがすべて、あなたに感謝し あなたの慈しみに生きる人があなたをたたえ あなたの主権の栄光を告げ 力強い御業について語りますように。」(詩編145編8〜11節)

(救世軍士官〔伝道者〕)

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